クロネコが来る週末。| 佐賀から届く、私だけの冷凍便。
- shimauchi5
- 2025年8月7日
- 読了時間: 7分
更新日:2025年8月27日
佐賀から届く、週末ご飯。

ピーンポンとフロア玄関のベルが鳴る。
「あっ今日、だった」。
私は、大学2年生。 佐賀を離れて、大学近くの学生マンションで一人暮らしをしています。
平日は、朝と夜のごはんが用意されるのですが、土日はお休みなので、ほぼ自炊します。
うちは両親とも共働きで、母は特別支援学校の講師。
父は、あまり売れないコピーライターです。
父の作品やサイトのブログ記事を見たことがありますが、あの酒飲みオヤジの言葉とは思えないくらい、情緒が溢れ、感性に響く言葉たちばかりです。
もし良かったら覗いてみてください→shimauchi-design.com
とにかく、両親ともに働いているので、自分のお小遣いも4万円は父が毎月送ってくれるのですが、それじゃ足らないので、時々母が助けてくれます。 なぜなら、4万円はお昼ご飯代でほぼ消えてしまいます。
これまでで、一番切なかったのが、せっかくできた友人から、ランチのお誘いがあったけど、お金が足りそうになくてウソをついて行けなかったこと。
もちろん、自分でもバイトはしてますけど、大学の課題が多い時はどうしてもバイトを休まなくてはなりません。
別に、勉強熱心なわけではないのですが、一応教師の部類に属する、暑苦しいくらいの熱量で母が言うのです。
「学業優先よ!」
「23時までバイトぉ~?話が違うじゃないの!」
「そんなバイト辞めなさい!」
心配が尽きない母は、時々本気とも取れる、恐ろしいことも言います。
「来年あたり、そっちに住もうかね」と。
そんな私ですが、ちょっとだけの楽しみが2週間に一度やってきます。
かねすえキッチンからの宅急便なのです。
一人暮らし用の冷蔵庫のため、たくさんは入らないのですが、それを見込んで4品くらいが送られてくるのです。
一人なのに、繋がっている感じがする。
しっかりと冷えた段ボールをビリビリと開封します。
確か、今回は中華シリーズを送ったと母からLINEが来てました。
ゴソゴソ中身を取り出すと、四角いパッケージが4つありました。
思わず「おー」と口走り、そして更に「おお?おお。」と一つ見ては、「おー」を繰り返してました。
高校生の時に、時々父が作ってくれたお弁当に入っていたチンジャオロースや酢豚は、美味しいのは知っているのですが、それでもやっぱりトキメキます。

私のお小遣いでは、高級中華なんて食べれないので。
父も母もお酒が大好きなので、私もいずれは飲む人になるのかな、とやや怯えてましたが、まだ今のところ、酒よりもコメ派なのです。
ですので、4品からどれをチョイスしようか、それとも2つチンして、ハーフ&ハーフという手もある。
など、食べる前のアレコレ迷うのも、普段にはないシーンなので楽しかったりするのです。
父は「ちょっと量が足らんわ」、と言ってましたが、私にはちょうど良い量です。
むしろそれくらいの方が、どうしても白米が自然と進んでしまう事は、高校生の頃のお弁当で経験済みなので、それ以上おかずがあると、体重計を気にしなくてはなりません。
ですから、それくらいが良いのです。
さて、今夜は白米2合と麻婆豆腐にします。
チンの時間をチラリと見て、炊飯器の炊きあがり時間もチラリと見て、最後にテーブルを見た時に、スマホの通知が視界に入りました。
それほどチャラチャラしてない私のスマホからは、来週の推しのコンサートに一緒に行く友人から、ドキドキして食事ものどを通らないよー、など女子っぽい肯定をお願いする通知が来てました。
フッ。 構ってもらいたいのだろうが、この3分30秒後に訪れる、中華ワールドへの介入はさせない。
しばらく、黙っとれ。と心の中で毒づき、MUJIで買い揃えた茶碗とお皿をセットしました。

レンジは規則正しく、確実にカウントをしている。ヨシヨシ。
しかも、若干鼻を刺激する中華特有の逃れられない旨さが詰まった匂いが、徐々に部屋中に広がってきました。
残り20秒になった時に、炊飯器の蓋を開け、シャモジで炊きたての白ご飯をぐりぐりし、いよいよ幕開け準備。
一気にお腹が何かを入れろー!と言っている気がする。
もう、私の眼はレンジの中でクルクル回る四角いパッケージにくぎ付け。
ちーん、というゴールと、あとは食べるだけのスタートがいよいよ始まります。
始まるのです。 私だけの美味しいごはんタイムが。
インスタに載せようか迷ったけど、返事が面倒ですし、それよりも、目の前のささやかで豪華な私だけの食事に集中することにしました。
誰にも気を使わないまま過ぎていく時間というのは、大人になるにつれ、貴重な時間だと最近つくづく思うようになりました。
キッチンペーパーを2枚くらい取って、さらに二重にしてパッケージの端っこをつまみ上げ、右手でお皿を準備します。
一気にお皿に流し込んで、パッケージの四隅に残っている麻婆が無いかチェックします。
整いました!
儀式の様に、ウーロン茶を一口流し込みます。ちょっと落ち着いてきました。
麻婆豆腐からは、遠慮なしにモウモウと湯気が出てます。
フーフーし、スプーンですくって、口の中へ投入します。
アフアフと口を金魚のように尖らせて、麻婆が残る口の中に、すかさず白米を入れてあげます。
ああ、旨い。 もぐもぐして、口から鼻にかけて風味が抜けていきます。 そんな余韻は後で十分味わえば良いので、第二弾を口へ運びます。
ああ、美味しい。
中華のうま味たっぷりの脂が、飢えきっていたのでしょう、私のすべての細胞に染み入るようです。
もう、体重計君は無視しよう。 そう決めて、誰もいない事を良いことに、白米を高校の野球部員のように、汗をぬぐいながら、かっこみました。
ああ、もう堪らない。
これ以上のうまい晩御飯はないのでは?と思うくらい、一気に昇天となりました。

半分くらい食べかけた時に、ふと送られてきた伝票が目にとまりました。
かねすえキッチン、そして佐賀県。
四国松山に居るはずなのに、部屋の空気が田んぼの匂い、太陽の匂い、野球部が練習する土の匂いに包まれたように感じました。
一人なのに、"食べたら誰かと繋がっている"ような気がしました。

きっと、こんな不思議な気分で美味しい週末ごはんを過ごしているのは、このマンションで私だけだね、と妙に勝ち組になった気分で食べ終えたのでした。
かねすえキッチンが、暮らしの一部になる。
この二週間に一度、かねすえキッチンから送られてくる冷凍便は、私の中ですっかり定着していました。
ただただ美味しいものがやってくるだけでなく、このリズムが、ああ、やっぱりわたしは佐賀県人なんだな、とふる里との、両親との繋がりを再認識させてくれるのです。
そう気づいたのは、大学2年目になってからです。
1年目は、初めて尽くしなので、とにかくバタバタと過ぎていきました。
もうすぐ2年生になる冬の寒い日に、母が初めてかねすえキッチンから、冷凍の焼カレーとうれしの茶のラテを送ってくれました。
この時に体感した”暖かさ”は、母からの応援。
そして焼カレーの香ばしい美味しさ。
それから、食後のラテを通じて終始わたしは一人ではない、という目には見えない、沈黙の五感を開花させるほどのものでした。
もちろん、母にも御礼LINEを入れましたが、あまりにも美味しかったのでお店のサイトへメールで"美味しかった!"とお伝えをしました。

というのも、わたしは、大学で心理学を専攻しています。 その心理学で”反報性の原理”という法則があります。
ひとから何か親切にしてもらったら、そのお返しをしたくなる、という感謝の循環みたいなことを言うのですが、まさにその心境でした。
というか、本当はそんなに理屈っぽいことではなくて、この感動を自分の中だけにとどめておく事ができなかった、というのが正直なところです。
そして、本当かどうか分かりませんが、この定期的に冷凍便を送るサービスが、かねすえキッチンでサブスクサービスとして検討している、という事を父から教えてもらいました。
一人暮らし学生さんを胃袋で応援!みたいな企画のようです。
全国の名も知らない誰かが、私の様に二週間に一度の自分だけの世界を楽しんでいると思うと、SNS以外のリアルな仲間が増えたような気がします。
頑張れー!かねすえキッチン!






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